神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
「さぁ、まずは包丁を置いてくれ。危ないから。な?」
ジュリスが必死に、優しく呼びかけていたが。
「う…う…」
…う?
「う…うるさーいっ!!」
強盗犯、半泣きで逆ギレ。
そう来たか。
「お前なんかに、何が分かるって言うんだよ!聖魔騎士団のエリートに、俺みたいな社会の底辺の気持ちが分かってたまるかっ!」
あぁ。これは良くない流れだ。
逆ギレしちゃった。
しかも、火に油を注ぐかのように。
「ジュリスはエリートなんだって。凄いね」
「…ベリクリーデ。今それどころじゃないからな?」
こんなときでも呑気なベリクリーデの胆力って、なかなか凄いよね。
何処までも空気を読まないベリクリーデに、さすがのジュリスも堪忍袋の緒が切れるかと思いきや。
「ねぇ。社会のてーへんって何?」
「えっ?」
ベリクリーデはきょとんとした様子で、強盗犯に質問した。
そんな質問をされるとは思っていなかったのか、これには強盗犯もびっくりして手が止まっていた。
「てーへんって、誰かに言われたの?誰が決めたの?」
「え?いや、それは…」
「それに、君は凄く立派な人じゃないの?」
「へ?な、何で?」
ベリクリーデは窓の外を指差した。
「この建物、色んな人に取り囲まれてたよ。それでも、色んな人にたのもーってされても、動かざること岩の如しで頑張ってるんだもん。凄いね」
…岩じゃなくて、山なんだけどね。
まぁ、言いたいことは伝わるよ。
「あ、えーと…。…その、どうも…」
まさか褒められるとは思っていなかったらしく。
強盗犯は、戸惑いながらそう答えていた。
困ってるだろうなぁ。突然褒められて…。
「君はこんなに立派なのに、何で自分を悪く言うの?」
「…だって…。…僕は、昔から頭が悪くて…。受験に失敗して親に失望されて、就職先だって、今にも潰れそうな小さな町工場で…。そこで朝も夜もなく、仕事に明け暮れて…」
自分語りが始まっちゃった。
それは…苦労したんだね。
強盗犯相手なのに、何だか同乗してきちゃった。
「そうなんだ。偉いね」
「そこまでしても…女房には浮気されて逃げられて…。その町工場も先月潰れて、今じゃ無職だよ」
なかなか大変な…波乱万丈な人生だ。
成程、そんな辛い目に遭ったら、悪いことを考えるのも無理ないよ。
だからって、銀行強盗して良い理由にはならないけど。
「僕だって本当は、銀行に勤めるような立派な大人になって、家庭を持って幸せに生きたかったのに…」
「銀行で働いてたら立派なの?銀行でも炭鉱でも街のゴミ拾いでも、どれも立派な仕事だと思うけど」
私もそう思うよ、ベリクリーデ。
それが違法な仕事や、人を傷つけるものでなければ…どんな仕事も立派だと思うけどな。
だって、どんな仕事だって、その仕事をしてくれる人がいるお陰で、世の中は回ってるんだからさ。
自分で卑下しちゃ駄目でしょ。
ジュリスが必死に、優しく呼びかけていたが。
「う…う…」
…う?
「う…うるさーいっ!!」
強盗犯、半泣きで逆ギレ。
そう来たか。
「お前なんかに、何が分かるって言うんだよ!聖魔騎士団のエリートに、俺みたいな社会の底辺の気持ちが分かってたまるかっ!」
あぁ。これは良くない流れだ。
逆ギレしちゃった。
しかも、火に油を注ぐかのように。
「ジュリスはエリートなんだって。凄いね」
「…ベリクリーデ。今それどころじゃないからな?」
こんなときでも呑気なベリクリーデの胆力って、なかなか凄いよね。
何処までも空気を読まないベリクリーデに、さすがのジュリスも堪忍袋の緒が切れるかと思いきや。
「ねぇ。社会のてーへんって何?」
「えっ?」
ベリクリーデはきょとんとした様子で、強盗犯に質問した。
そんな質問をされるとは思っていなかったのか、これには強盗犯もびっくりして手が止まっていた。
「てーへんって、誰かに言われたの?誰が決めたの?」
「え?いや、それは…」
「それに、君は凄く立派な人じゃないの?」
「へ?な、何で?」
ベリクリーデは窓の外を指差した。
「この建物、色んな人に取り囲まれてたよ。それでも、色んな人にたのもーってされても、動かざること岩の如しで頑張ってるんだもん。凄いね」
…岩じゃなくて、山なんだけどね。
まぁ、言いたいことは伝わるよ。
「あ、えーと…。…その、どうも…」
まさか褒められるとは思っていなかったらしく。
強盗犯は、戸惑いながらそう答えていた。
困ってるだろうなぁ。突然褒められて…。
「君はこんなに立派なのに、何で自分を悪く言うの?」
「…だって…。…僕は、昔から頭が悪くて…。受験に失敗して親に失望されて、就職先だって、今にも潰れそうな小さな町工場で…。そこで朝も夜もなく、仕事に明け暮れて…」
自分語りが始まっちゃった。
それは…苦労したんだね。
強盗犯相手なのに、何だか同乗してきちゃった。
「そうなんだ。偉いね」
「そこまでしても…女房には浮気されて逃げられて…。その町工場も先月潰れて、今じゃ無職だよ」
なかなか大変な…波乱万丈な人生だ。
成程、そんな辛い目に遭ったら、悪いことを考えるのも無理ないよ。
だからって、銀行強盗して良い理由にはならないけど。
「僕だって本当は、銀行に勤めるような立派な大人になって、家庭を持って幸せに生きたかったのに…」
「銀行で働いてたら立派なの?銀行でも炭鉱でも街のゴミ拾いでも、どれも立派な仕事だと思うけど」
私もそう思うよ、ベリクリーデ。
それが違法な仕事や、人を傷つけるものでなければ…どんな仕事も立派だと思うけどな。
だって、どんな仕事だって、その仕事をしてくれる人がいるお陰で、世の中は回ってるんだからさ。
自分で卑下しちゃ駄目でしょ。