神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
…その帰り道。

「ジュリス、さっきの凄かったね」

興味津々の顔で、ベリクリーデはジュリスに向かってそう言った。

それ、私も言いたかった。

「さっきのって?」

「あの、剣でしゅば、ってやった奴」

剣で、しゅばって…。

言いたいことは伝わるんだけど。

「あぁ…抜刀術のことか」

そう言ってたね。抜刀術。

「ジュリス、あんなこと出来たんだ。初めて見た」

「あぁ、まぁ滅多にやらないからな…。昔取った杵柄って奴だ」

「ジュリスそういうこと多いよね」

「無駄に長生きしてるとな、余計な知識を身につける機会に恵まれるもんだよ」

あれは全然余計な知識ではないと思うけどな。

むしろ、役に立ったじゃない?

「昔、無月院(むげついん)流の道場に通ってたことがあって…。そのとき勉強したんだ。使ったのは久し振りだけどな」

へぇ…。そんな名前の道場があるんだ。

何だか強そう。

「あれ、どうやってやるの?」

「流派によってまちまちだが…。無月院流の抜刀術では、簡単に言えば、超高速で刀を抜いて対象を斬って、また鞘に収める…ってのが一連の流れなんだが…」

「私にも出来るかな?」

「…素人には無理だぞ?」

…だよね。

いかにも、熟練の技を必要としそうな動きだったもん。

一朝一夕じゃ身につかないだろう。

「格好良かったよ、あれ。私もやりたい」

「格好良いって…。ただ格好良いだけじゃないんだぞ?長所もあれば短所もあるし…」

「?強いんだから、長所しかないんじゃないの?」

「そんなことねぇよ。無月院流の抜刀術は基本、受け技ばかりだから。敵の方から攻撃を仕掛けてきてくれたときしか使えない」

「…」

成程。敵が先に攻撃を仕掛けてきたとき、反撃として使える技なんだね。

逆に、こちらから仕掛けることは出来ない。

反撃限定の技か…。確かに、使うタイミングを選びそうだね。

反撃限定ってことは、まず先に敵の一撃を受けなきゃならない訳で…。

それって、結構危険だもんね。

「…??」

…まぁ、ベリクリーデはあんまり…理解してないみたいだけど。
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