神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
「敵と自分の間合いを見極めて、辛抱強く待って、間合いに入ったら撃つ。それが無限院流抜刀術だ」

「…ほぇー…。格好良いけど、意外と難しいんだね」

「まぁ、そうだな…。でも、その分長所もあるぞ?」

「格好良いところでしょ?」

「…違うわ」

格好良いのは大切だけど。

でも、それだけじゃないよね。

格好良いだけじゃないよ。

「色々条件はあるし、状況を選ぶし、それなりの忍耐力がないと使えないが…。その分、間合いに入った敵は確実に仕留められる」

…確実に…相手を仕留める技。

成程、それは大切だね。

発動条件をクリアするのは難しいけど、
その分リターンも大きい。

「さっきも見ただろ?強盗犯を無力化したとき」

「うん」

「今回は色々と条件が揃ったから、珍しく抜刀術なんて使ったんだが…」

条件か…。

「相手の方から仕掛けてきてくれたし、しかも奴はド素人だ」

確かに、強盗犯の方から包丁を持って飛びかかってきてくれたもんね。

ジュリスの間合いに、自分から飛び込んできた。  

「『待ち』の時間は本当に辛いし、もどかしいけどな。その分、間合いに入った敵は確実に仕留められる」

「確実に?どんなに強い人でも?」

「確実にだ。鋼鉄でもコンクリートでも、豆腐みたいに斬れる」

「おぉ、それは格好良い」

鋼鉄を豆腐のように、か…。

「でも、それはあくまで、ちゃんと間合いを見て、正しい動きをしないも無理だからな。だからくれぐれも間合いを見誤らないように、見極めないといけないんだよ」

「ほぇー」

「分かったな?だから、お前には無理だ。カップ麺3分も待てないだろ、お前」

という、耳の痛い皮肉を言われたにも関わらず。

ベリクリーデは理解出来なかったようで、きょとんと首を傾げた。

「カップ麺って?何でカップ麺を食べるのに待つ必要があるの?蓋を開けて齧りつくだけなのに」

「…お前、カップ麺という食べ物を正しく理解してるか…?」

お湯を入れて食べるものだってことさえ、知らなそうだよね。

蓋を開けて、そのまま硬い麺に齧りついてそう。

私も同じ身体を共有してる訳だから、くれぐれも歯を大事にしてね。
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