神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
私は、勝利を確信した。
多分、これを見ていたジュリスも同じことを思っただろう。
他の人は…何が起きたのか、目で追えなかったんじゃないだろうか。
当のバニシンでさえも。
「あ…?お前、何、しやがっ…」
そう言って振り向こうとした、その瞬間。
私の何倍も太くて、筋骨隆々なバニシンの両脚に、赤い亀裂が入った。
バニシン本人が首を傾げる間もなく。
プツプツと、血の粒が湧き上がり。
脚から血を噴き出すと同時に、バニシンの巨躯が地面に崩れ落ちた。
「うわぁぁぁ!?脚が…俺の脚が!!」
…自分の身に何が起きたのか、ようやく理解したらしい。
私はジュリスに習った抜刀術で、バニシンの両脚を斬った。
本当に、まるで豆腐みたいに簡単に斬れるんだね。
あまり気味の良い感触じゃないね。
私だって本当は、ジュリスがそうしたように、バニシンの武器だけ斬って終わらせたかった。
だけど、あの斧を砕くだけじゃ、バニシンが戦意を喪失することはないだろう。
だから、脚を斬った。
立てなくなれば、さすがに文句のつけようのない戦闘不能状態になるでしょう?
「…戦闘不能。だよね?」
私は、審判のマミナ・ミニアルに向かって尋ねた。
いくら君がアーリヤット皇国贔屓だろうと、ここまで明らかな戦闘不能状態じゃ、文句のつけようがないよね。
これ以上は戦えないよ。バニシンも…私も。
「しょ、勝者…ルーデュニア聖王国代表、ベリクリーデ・イシュテア」
苦虫を噛み潰したような顔で、マミナは私の勝利を宣言した。
君の物分かりがよくて、助かったよ。
命を奪わなきゃ戦闘不能とはみなさない、って言われたら…もっとややこしいことになるところだった。
「すぐに回復魔法をかけて、接合してあげて」
両脚を抑えて悶えているバニシンを見下ろして、そう頼んだ。
私は別に、彼が憎くて戦った訳じゃない。
決闘だったから、仕方なく刃を交えただけだ。
こうして決闘が終わった以上、無益な流血は望まない。
早く治してあげて欲しい。
「…ちっ、この役立たずが…」
彼なりに必死に健闘したにも関わらず。
アーリヤット皇国のナツキ皇王は、両脚から出血するバニシンを見下ろして、そう吐き捨てた。
…そう。
そんな態度じゃあ、とても君はルーデュニア聖王国には勝てないだろうね。
私はそう確信していた。
多分、これを見ていたジュリスも同じことを思っただろう。
他の人は…何が起きたのか、目で追えなかったんじゃないだろうか。
当のバニシンでさえも。
「あ…?お前、何、しやがっ…」
そう言って振り向こうとした、その瞬間。
私の何倍も太くて、筋骨隆々なバニシンの両脚に、赤い亀裂が入った。
バニシン本人が首を傾げる間もなく。
プツプツと、血の粒が湧き上がり。
脚から血を噴き出すと同時に、バニシンの巨躯が地面に崩れ落ちた。
「うわぁぁぁ!?脚が…俺の脚が!!」
…自分の身に何が起きたのか、ようやく理解したらしい。
私はジュリスに習った抜刀術で、バニシンの両脚を斬った。
本当に、まるで豆腐みたいに簡単に斬れるんだね。
あまり気味の良い感触じゃないね。
私だって本当は、ジュリスがそうしたように、バニシンの武器だけ斬って終わらせたかった。
だけど、あの斧を砕くだけじゃ、バニシンが戦意を喪失することはないだろう。
だから、脚を斬った。
立てなくなれば、さすがに文句のつけようのない戦闘不能状態になるでしょう?
「…戦闘不能。だよね?」
私は、審判のマミナ・ミニアルに向かって尋ねた。
いくら君がアーリヤット皇国贔屓だろうと、ここまで明らかな戦闘不能状態じゃ、文句のつけようがないよね。
これ以上は戦えないよ。バニシンも…私も。
「しょ、勝者…ルーデュニア聖王国代表、ベリクリーデ・イシュテア」
苦虫を噛み潰したような顔で、マミナは私の勝利を宣言した。
君の物分かりがよくて、助かったよ。
命を奪わなきゃ戦闘不能とはみなさない、って言われたら…もっとややこしいことになるところだった。
「すぐに回復魔法をかけて、接合してあげて」
両脚を抑えて悶えているバニシンを見下ろして、そう頼んだ。
私は別に、彼が憎くて戦った訳じゃない。
決闘だったから、仕方なく刃を交えただけだ。
こうして決闘が終わった以上、無益な流血は望まない。
早く治してあげて欲しい。
「…ちっ、この役立たずが…」
彼なりに必死に健闘したにも関わらず。
アーリヤット皇国のナツキ皇王は、両脚から出血するバニシンを見下ろして、そう吐き捨てた。
…そう。
そんな態度じゃあ、とても君はルーデュニア聖王国には勝てないだろうね。
私はそう確信していた。