神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
今度こそ、選ばれるのは俺かシルナか…と思ったが。

「お前だ。…半端者」

ナツキ様が真っ直ぐに指差したのは、かつて『HOME』に所属していた、自分の元部下。

半端者と呼ばれた、人間とケルベロスのハーフ…マシュリだった。

「…」

マシュリは、まるで自分が選ばれることを予想していたかのように、驚きもせずにじっとナツキ様を見つめ返した。

「お前の手の内は割れている。当然、対策も考えてある」

マシュリが黙っているのを良いことに、ナツキ様は勝ち誇ったように饒舌に喋った。

この野郎、まだイキるつもりか。

さっき負けた癖に。

「俺を裏切った報いを、存分に受けさせてやる」

…何言ってんだ、この男。

「裏切っただと?散々マシュリを利用した癖に…」

刺客に仕立て上げたと思ったら、今度は「外交大使」扱いして、ルーデュニア聖王国を糾弾する口実にして。

ルディシアのこともマシュリのことも、散々利用して傷つけて。

それなのに、この期に及んで裏切り者扱いとは。

面の皮が厚いにも程があるんだよ。何度言わせるんだ。

「手の内が分かってる相手を、一方的に攻撃して…それで勝って満足なのかよ、あんたは?随分情けない王様だな」

思わず、ナツキ様を睨んで言い返さずにはいられなかった。

マシュリを裏切り者扱いされて、黙っていられるものか。

「…」

プライドを刺激されたのか、ナツキ様はジロリと俺を睨んだ。

好きにしろ。勝手に睨めよ。

全然怖くないから。

「マシュリが裏切り者なら、あんたは卑怯者だな。一国の王として、器量が知れるってもんだ」

「全くだ。もっと言ってやれ羽久」

「まぁまぁ、そう寄ってたかって虐めなくても。そうしなきゃ勝てないんですよ、この人。可哀想なもんじゃないですか」

俺に便乗して、キュレムとルイーシュも言いたい放題だった。

はからずも、聖魔騎士団の比較的口の悪い面子が集まってんな。

…しかし。
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