神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
…それから、およそ一時間後。

俺と『八千代』とツキナの三人は、学院の食堂に集まっていた。

…一匹の猫と共に。

「買ってきたよ。猫の餌」

「あっ、すぐり君お帰り!」

任務から帰ってきたら、ツキナが笑顔で出迎えてくれる。

最高だね。

「大丈夫だった?見つからなかった?」

「勿論だよ。誰にも見られてないって太鼓判を押すよ」

これでも、誰にも見られないよう任務をやり果せるのは、俺のジョブでね。

道中は暗闇の影に潜み、気配を消して素早く移動。

猫の餌を売ってそうな、24時間営業のドラッグストアを見つけた。

勿論、堂々と正面から入って店員に顔を見られる…ような間抜けはしていない。

他の客が現れるのを辛抱強く待ち、客の影に隠れるようにして入店。

猫の餌を選んだ後、レジに並んでお金を払う…なんてことは当然出来ないので。

その場にお金だけ置いて、そのまま逃げてきたよ。

お金はらったんだし。万引きじゃないよね。セーフセーフ。

そして帰り道も、当然誰にも見られないように帰ってきた。

この特技だけは、学院長せんせー達にも負けないつもりだからさー。

絶対誰にも見られてないと断言出来るよ。

「おぉ…!すぐり君凄い!」

でしょ?

ツキナの笑顏が見られるなら、遥々買いに行った甲斐があるよ。

「…それで、猫の餌ってこれでいーの?」

俺は、ドラッグストアで買ってきた猫の餌…金色の缶に入っている…を、ポケットから取り出した。

キャットフード売り場、って書いてあったから多分これでいーんだろうと思ったんだけど。

なんか思ってたのと違うんだよね。

「うん!金の猫缶だ〜」

金の猫缶?そんな名前なの?この餌。

「猫の餌って言ったら、ねこまんまかと思ってた」

と、『八千代』。

俺もそう思った。

「あとは焼き魚とか」

油断していると、どら猫が咥えて持っていってしまうとか。

あれって都市伝説なの?

「人間の食べ物はあんまり食べさせちゃ駄目なんだって。猫ちゃんには味が濃過ぎるらしいよ」

ツキナがそう教えてくれた。

へー、そうなんだ。

意外と猫って贅沢なんだね。

「はいっ、猫ちゃん。牛乳だよ。飲んで〜」

人肌程度に温めた牛乳をお皿に入れ、ツキナは猫の前にお皿を差し出した。

ツキナに食べさせて(飲ませて?)もらうなんて。本当に贅沢な猫だ。

「にゃー」

と一声鳴くと、猫はぴちゃぴちゃ音を立てて牛乳を舐めていた。

飲んでる飲んでる。

「猫缶もあるよ、はいっ。どーぞ」

金の猫缶もプレゼント。

お腹が空いていたのか、猫はあっという間に餌を平らげた。

良い食べっぷりだよ。

「良かったぁ。元気になったかな?」

ツキナの満面の笑みだし、もう言うことはないね。
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