神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
「亡命…?俺が?何で?」

「このままアーリヤット皇国に帰ったら、君はどんな目に遭うのか分からないんでしょう?」

役目を果たせない者は生きる価値なし、とまで言うんだろう?

任務に失敗して帰ったルディシアが、どんな目に遭うか分かったもんじゃない。

良くて罷免。悪くて…処刑。

アーリヤット皇国から追い出される可能性もある。

ルディシア本人は、追い出されても構わないようだが…。

「そうだけど…でも、別に…。それなら俺が一人で出ていけば良いだけだし」

「…行く宛も帰る場所もなく、一人で放浪するのは辛いよ。君だってよく分かってるでしょう?」

「…」

その無言は何を意味するのか、分からない俺ではなかった。

…そうだよな。

行く場所も、帰る場所もない。

頼れる人もいない。会いたい人も。

ルディシアにとって唯一の友達は、墓の下から掘り出した死体だけ…。

夜の闇に潜み、誰からも気味悪がられながら一人で生きていく。

想像しただけで、楽しい人生であるとは思えない。

…それが嫌だったから、お前は皇王直属軍に入ったんじゃないのか?

自分の根付く居場所が欲しくて。

これまでのルディシアの言動を見るに、こいつは所謂…「構ってちゃん」なのだ。

イレースのゲンコツが効いたのも、それが理由だろう。

一人で良いと強がりながら、本当は誰よりも、誰かと一緒にいたいと思ってるんだ。

…全く、素直じゃないよなぁ。

その点、令月とすぐりはもっと素直だったぞ。

「ここにいれば良い。私がフユリ様に頼んで、君をアーリヤット皇国に帰さないよう、ルーデュニア聖王国にいられるように取り計らうから」

「…」

「この国で、君は自分の居場所を見つければ良いんだよ。…そういうのは、駄目かな?」

「…別に…駄目じゃないけど」

おっ。

ちょっとデレたか?

見た目相応に、可愛いところあるじゃないか。
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