神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
第27章
――――――…アーリヤット皇国との決闘、三回戦が始まるや否や。
ハクロとコクロの二人が杖を振った瞬間、羽久は気を失って、その場に崩れ落ちた。
「羽久…!羽久、大丈夫…!?しっかりして…!」
慌てて羽久を抱き起こして揺すってみたけど、羽久の瞼は固く閉じられたままだった。
…わざわざ二人がかりで、私と羽久の二人を指名してきたからには、何か策があるんだろうとは思っていたけど。
まさか、こんな一瞬でカタをつけに来るとは。
決闘の勝敗なんてどうでも良いけど、羽久が二度と目を覚まさない…とかいう顛末は遠慮したい。
「…君達、羽久に何をしたの?」
羽久が、私の居ない「幸福な世界」に飛ばされるとは知らず。
私は眠る羽久を腕に抱いたまま、ハクロとコクロの二人に尋ねた。
「これで戦闘不能だから、君達の勝ちだって言いたいの?」
「いいえ、そんなつもりはありません」
白い髪の方、ハクロが答えた。
「彼はただ、幻を見ているだけです」
…幻、か。
そんなことだろうと思った。
この二人が使う魔法は、相手を眠らせるとか幻を見せるという、精神攻撃の類なのだろう。
単純に攻撃力の高い魔法より、余程タチが悪い。
これまでも何度か経験したことがあるけど…一番厄介なパターンだね。
「幻か…」
一体、どんな幻を見ているんだろうね。
それが幸福な夢であろうと、不幸な夢であろうと関係ない。
いずれにしても、現実じゃないのだから。
「…君を倒せば、羽久は幻から覚めるのかな?」
私は、ハクロに向かって尋ねた。
しかし、答えたのはハクロではなく。
「いいえ、あなたも同じように、これから幻を見てもらいます」
双子の黒い髪の方…コクロだった。
「二人揃って、無事に幻から覚めて現実に帰ってくることが出来たら、この決闘はあなた方の勝ち」
「ですが、もし帰ってこられなかったら…私達の勝ちです」
…成程。
それはシンプルで面白いね。
でも、果たしてナツキ様がそれを認めてくれるかな?
「…」
私はちらりとナツキ様の方を見たけど、彼は無言で、つまらなさそうにこちらを眺めるだけだった。
…好きにしろ、ってところかな。
それとも、自分の部下を信用しているのだろうか?
どうやらハクロとコクロは、ナツキ様の懐刀のようだし。
自信があるんだろうね。私と羽久が…二度と幻から覚めることがないだろうと、確信しているが故の余裕だ。
ハクロとコクロの二人が杖を振った瞬間、羽久は気を失って、その場に崩れ落ちた。
「羽久…!羽久、大丈夫…!?しっかりして…!」
慌てて羽久を抱き起こして揺すってみたけど、羽久の瞼は固く閉じられたままだった。
…わざわざ二人がかりで、私と羽久の二人を指名してきたからには、何か策があるんだろうとは思っていたけど。
まさか、こんな一瞬でカタをつけに来るとは。
決闘の勝敗なんてどうでも良いけど、羽久が二度と目を覚まさない…とかいう顛末は遠慮したい。
「…君達、羽久に何をしたの?」
羽久が、私の居ない「幸福な世界」に飛ばされるとは知らず。
私は眠る羽久を腕に抱いたまま、ハクロとコクロの二人に尋ねた。
「これで戦闘不能だから、君達の勝ちだって言いたいの?」
「いいえ、そんなつもりはありません」
白い髪の方、ハクロが答えた。
「彼はただ、幻を見ているだけです」
…幻、か。
そんなことだろうと思った。
この二人が使う魔法は、相手を眠らせるとか幻を見せるという、精神攻撃の類なのだろう。
単純に攻撃力の高い魔法より、余程タチが悪い。
これまでも何度か経験したことがあるけど…一番厄介なパターンだね。
「幻か…」
一体、どんな幻を見ているんだろうね。
それが幸福な夢であろうと、不幸な夢であろうと関係ない。
いずれにしても、現実じゃないのだから。
「…君を倒せば、羽久は幻から覚めるのかな?」
私は、ハクロに向かって尋ねた。
しかし、答えたのはハクロではなく。
「いいえ、あなたも同じように、これから幻を見てもらいます」
双子の黒い髪の方…コクロだった。
「二人揃って、無事に幻から覚めて現実に帰ってくることが出来たら、この決闘はあなた方の勝ち」
「ですが、もし帰ってこられなかったら…私達の勝ちです」
…成程。
それはシンプルで面白いね。
でも、果たしてナツキ様がそれを認めてくれるかな?
「…」
私はちらりとナツキ様の方を見たけど、彼は無言で、つまらなさそうにこちらを眺めるだけだった。
…好きにしろ、ってところかな。
それとも、自分の部下を信用しているのだろうか?
どうやらハクロとコクロは、ナツキ様の懐刀のようだし。
自信があるんだろうね。私と羽久が…二度と幻から覚めることがないだろうと、確信しているが故の余裕だ。