神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
「何で、そんなに…俺に構う訳?そんなことしてメリットがあるの?」

メリットとか言い出す辺り、本当に素直じゃない。

「メリット?そうだな…。強いて言うなら、私はもう二度と、君を敵に回したくない。だからかな?」

と、シルナは悪戯っぽく笑った。

それはあるな。

ここでルディシアに恩を売っておけば、二度とゾンビ軍と対峙することはなかろう。

…でも、それだけではない。

「それに…困ってる人がいるのに、見過ごせないよ」

…それが一番の理由なんだろう?

シルナはそういう奴だよ。

「…何それ、馬鹿らし…。他に何か魂胆があるんじゃないの?」

「魂胆って…。別にないよ。ただ、たまに…私達が困るようなことがあったら、助けてくれたら嬉しいなぁと思うけど」

ちゃっかりしてんな、シルナも。

まぁ、助けてくれたら嬉しいってだけで、絶対手を貸せという意味ではない。

ネクロマンサーとしての力を使わず、静かに平穏な暮らしを送りたいと言うなら。

それはルディシアの自由だし、そのときは俺達も、ルディシアの意思を尊重するつもりだ。

「私の魂胆はその程度だよ。他に理由はない」

「本当に…?皇王が言ってた。イーニシュフェルト魔導学院の学院長は悪党なんだって」

酷い言い種だよ。

「悪党って…。いや、否定は出来ないかもしれないけど…」

「学院に引きこもって、生徒を材料に怪しげな実験を繰り返してる、とも言ってた」

めちゃくちゃ言ってんな。

根も葉もない噂を立てないで欲しいものだ。

生徒を材料に人体実験…どころか。

猫と戯れて遊んでんぞ。

「そんな危ない国にいたら、俺もこき使われるに違いない。やっぱり俺は出てい、」

「ごちゃごちゃうるさいんですよ、あなたは」
 
ルディシアの言葉を遮るように。
 
こめかみに血管を浮き立たせたイレースが、ジロリとルディシアを睨んだ。
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