神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
…さっきから、ちょくちょく気になってるんだけど。

「聖賢者って、誰のこと?…もしかして私のこと?」

「え…?聖賢者様は、あなた様でしょう?他に誰が居ると言うのですか」

…やっぱり、そうなんだ。

嫌な呼び方だなぁ…。実に嫌な呼び方だ。

そんな呼び方は…されたくないな。

呼ばれる度に、過去の過ちをいちいち掘り起こされてる気分になる。

「私は、聖賢者なんかじゃないよ」

「え…」

ましてや、「様」をつけて呼ばれるような立場でもない。

それならまだ、いつもみたいにパンダ学院長だと呼ばれた方がマシだよ。

「聖賢者様…。本当に、どうされたのですか…?」

「…」

私は答えず、ベッドから降りて立ち上がった。

これ以上、幻に歪められたイレースちゃんを見ていられなかった。

それじゃあ、そろそろ行こうか。

「あ、あの…どちらへ?」

「…世界を見てくる」

ハクロとコクロが作った、この幻の世界がどうなっているのか。

果たして彼女達はどんな世界を作り出し、私に見せているのか…。

この目で確かめてくるとしよう。
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