神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
…ねぇ、二十音。私はどうしたら良い?

こんな幻の世界、何の価値もないと思っていたのに。

生まれ変わった、小さな君の姿を見て…私の心は酷く揺れ動いた。

ここは確かに、私にとっては虚しい世界だ。

でも、正しい世界だ。

誰にとっても、正しい世界。

本来元の世界も、こうであるべきだった。

私は己の役目を果たし、二十音は死ぬ。

でも生まれ変わって、私を知らない二十音になって、今度こそ愛してくれる母親のもとで、幸せに暮らしている。

二十音だけじゃない。

私が役目を果たしたお陰で、救われた人が大勢いる。

イレースちゃんも天音君もナジュ君も、令月君もすぐり君もマシュリ君も。

あのヴァルシーナちゃんでさえ、私の右腕として、私を慕い、支えてくれている。

そして、ヴァストラーナ族長も…。

皆私が正しい選択をしたことに喜び、そのお陰で救われている。

私が…自分の苦しみを押し殺して、ちゃんと正しい選択をしていれば。

きっと元の世界も、こんな風に誰もが幸せな世界だっただろうに。

今からでも遅くないって、そう言っているのだろうか。

今からでも遅くないから、お前は罪の十字架を背負って、この正しい世界で生きていけと。

例え幻でも、この正しい世界で。

私が犯した罪の、責任を取れと。

「…二十音」

こんなにも私は、君を一番大切に思っているのに。

世界にとって一番大切なことは、私の大切なこととは違うんだ。

ねぇ。二十音…私、どうしたら良いと思う?







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