神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
一週間が過ぎ、図書館で調べることもすっかり調べ尽くし。

何もやることがなくなった俺は、ひたすら自分の部屋で座り込み、虚空を見上げていた。

放心状態…って奴だな。

我ながら情けなくて泣きたくなるが、他にどうしたら良いのか分からない。

最初は、俺が授業をサボることに眉をひそめていたイレースだったが。

最近ではイレースも心配になってきたのか、ちょくちょく部屋を訪ねてくる。

イレースだけじゃなくて、天音やシュニィも俺を心配して、しょっちゅう声をかけに来る。

が、そんな仲間達の気遣いにも、俺は応えられる状態じゃなかった。

情けないって思ってるんだよ。本当に。

でも駄目なんだ。

シルナが隣に居ないってだけで、こうも心が空虚になるとは。

シルナと二人なら負ける気がしない、って意気込んで決闘に臨んだのに。

引き離された途端、放心状態で戦意を失うなんて。

これじゃあ、俺はもう負けたようなもんだな。

決闘に負けるとか、もうどうでも良いから。

とにかくこの状態を何とかして欲しかった。

…いや、何とかする必要はあるのだろうか?

だってこの世界は…俺以外の人間は、皆幸せに過ごしている訳で。

シルナだって、色々問題はあるだろうが、故郷のイーニシュフェルトの里で、仲間達に囲まれて暮らしているはずだ。

俺に巡り合うこともなく、本来のイーニシュフェルトの賢者としての役目を果たしているはずだ。

…罪を犯さず、正しい道を歩めているはずだ。

本当にシルナのことを思うなら…シルナだけじゃない。仲間達のことを思うなら…。

俺は…この世界に順応し、この世界で生きていくべきなのではないか?

俺さえ我慢すれば…皆、幸せに…。

この一週間、ずっと考え続けてきたことが。

再び頭の中に浮かんで、また深い思考の波に呑まれそうになった、その時。

「こんにちは。入りますよ」

ノックもなしに、不躾に部屋に入ってくる者がいた。

「…ナジュ…」

「やっぱり、まだ落ち込んでるんですか?…イレースさんとかシュニィさんとか、皆心配してましたよ」

…そうか。

で、ここに来てくれたってことは、お前も心配して来てくれたんだろ?

仲間達が、こんなに気遣ってくれてるのになぁ…。

本当情けないって言うか…。…情けないよ。

「僕は別に、心配したって言うか…。最近のあなたが、あまりにもずっと突拍子もないことばかり言ってるから」

「あ…?」

「聖戦がどうのとか、神と神の戦争だとか、神殺しだとか…中二病発言連発してたじゃないですか」

元の世界では、紛れもなく本当に起きた出来事だったんだけどな。

それも、神妙な顔つきで語られるべき事象だった。

それなのに、この世界では「中二病発言」と一刀両断されるんだもんな。

泣きたくなるよ。
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