神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
――――――…気がつくと、真っ青な空が両目いっぱいに飛び込んできた。

…俺、何してたんだっけ?

凄い、なんか…背中がゴツゴツしてるんだけど。

まさか、外で昼寝してた?

シルナじゃあるまいに、昼寝なんかしな、

…。

「…そうだ、シルナ!」

俺はガバッと起き上がって、すぐさま自分の横を見た。

すると。

「あ、羽久…」
 
同じく、俺と全く同じように起き上がったシルナと、目が合った。

あ…いた。

…。

「…」

「…」

そのまま、お互い無言で顔を見合わせること、たっぷり10秒。

…お見合いしてる場合じゃねぇんだよ。

「…お前、何処行ってたんだ!?」

俺は、シルナの胸ぐらを掴まんばかり迫った。

「え、いや、それは…こっちの台詞だよ!突然消えたかと思ったら、皆羽久のこと知らないし…!」

と、シルナは必死に訴えてきた。

「かと思ったら、里に行って君の姿を見つけて、心臓飛び出るほど驚いたんだからね…!?」

里?

何処のことだ?

「よ、よく分からんけど…。それは…ごめん」

「うん」

「…でも、お前も居なかったんだからな!?誰に聞いても、口を揃えてシルナなんて人間は覚えてないって」

「えっ?」

えっじゃないんだよ。

おまけに、どうやらシルナのいた世界には俺が存在していたようだが。

俺のいた世界では、シルナの存在を確認することは出来なかった。

多分何処かには居たと思うんだが、全然会えなかった。

無事を確かめられなかった分、俺の方がずっと肝を冷やしてたんだからな。

「は、羽久…一体どんな世界にいたの?」

「誰もシルナを知らない世界。その割に皆幸せそうで…。…そっちは?」

「羽久のいない世界。こっちも、皆幸せそうで…。私の隣にヴァルシーナちゃんが居た」

は?

何で今、ヴァルシーナの名前が出てくるんだ?

「…」

「…」

しばし、再び無言でお互いの顔を見つめ合う。

…詳しいことは分からんけど。

「どうやら、俺達…お互い難儀な世界にいたようだな」

「そうみたいだね…」

二人で無事に帰ってこられて、良かったと思おう。
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