神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
思い思いのやり方で、いろりを構ってやっていたそのとき。
突如として、学院長室の扉が開いた。
「入るよ」
「ん?」
生徒の誰かがいろりを探しに来たのか、と思ったが。
やって来たのは、生徒ですらなかった。
「ルディシアじゃないか」
「うん」
今では正式に亡命者と認められたルディシアが、学院長室に現れた。
「あっ、いろりちゃん〜!」
見知らぬ人物がいきなりやって来たことで、警戒したのか。
それとも単に、シルナに撫で回されることに耐えられなくなったのか。
あるいは…ルディシアが纏う、特有の「死の匂い」を野生の本能で察したからか。
いろりは、するりとシルナの手をすり抜けて窓の外に出ていった。
がっくり、と肩を落とすシルナ。
逃げられたな。
「…いろり?何それ」
「猫だよ。最近学院に来て、マスコットキャラみたいに可愛がってるんだ」
首を傾げるルディシアに、天音が説明した。
「ふーん」
興味なさそうなルディシアである。
ルディシアは生きている者よりも、死んでいる者の方に興味があるんだろうから。
「猫の世話か…。呑気なもんだね」
全くだよ。
「まぁまぁ…。精神衛生の為に、時にはリラックスも必要だよ」
「そうそう、天音君の言う通り。さぁ、丁度良いや、ルディシア君。一緒におやつを食べよう!」
早速、シルナのおやつタイムだ。
仕方ないな。イーニシュフェルト魔導学院の学院長室を訪ねるというのは、そういうことだ。
何人たりとも、シルナのお菓子攻撃を免れることは出来ない。
何なら、学院に来客が来てもチョコ菓子勧めてる始末だからな。
みっともないからやめろって、再三言ってるのだが。
今のところ、全く聞く耳を持たないシルナである。
「今日のおやつは〜、美味しい美味しいチョコタル、」
「どうですか。この国にはもう慣れました?」
「うん。気持ち悪いくらい親切な人ばっかで…本当気持ち悪いよ」
だ、そうだぞ。
「分かる。僕も最初来たときは、そう思ってましたから」
と、ナジュ。
そんなこと思ってたの?お前。
親切にされたなら、素直に喜んどけよ。
「食客っていうのは名目で、俺を監視したいんだと思ってたけど…」
「予想以上に自由が効くから、逆に居心地悪いんですよね」
「うん」
ルディシアは現在、聖魔騎士団の食客という立場で、聖魔騎士団に迎え入れられている。
ルディシアの実力なら、正式に聖魔騎士団魔導部隊に入っても、充分やっていけるとは思うのだが。
しばらくは大人しくしておいた方が良いだろう、というシュニィの計らいである。
ルディシアがルーデュニア聖王国に寝返ったことを知って、アーリヤット皇国がどう動くか…まだ分からないからな。
身を隠すという意味でも、しばらくは食客扱いということになった。
その方が良いだろう。ルディシアにとっても、新しい祖国に慣れる時間が必要だろうから。
突如として、学院長室の扉が開いた。
「入るよ」
「ん?」
生徒の誰かがいろりを探しに来たのか、と思ったが。
やって来たのは、生徒ですらなかった。
「ルディシアじゃないか」
「うん」
今では正式に亡命者と認められたルディシアが、学院長室に現れた。
「あっ、いろりちゃん〜!」
見知らぬ人物がいきなりやって来たことで、警戒したのか。
それとも単に、シルナに撫で回されることに耐えられなくなったのか。
あるいは…ルディシアが纏う、特有の「死の匂い」を野生の本能で察したからか。
いろりは、するりとシルナの手をすり抜けて窓の外に出ていった。
がっくり、と肩を落とすシルナ。
逃げられたな。
「…いろり?何それ」
「猫だよ。最近学院に来て、マスコットキャラみたいに可愛がってるんだ」
首を傾げるルディシアに、天音が説明した。
「ふーん」
興味なさそうなルディシアである。
ルディシアは生きている者よりも、死んでいる者の方に興味があるんだろうから。
「猫の世話か…。呑気なもんだね」
全くだよ。
「まぁまぁ…。精神衛生の為に、時にはリラックスも必要だよ」
「そうそう、天音君の言う通り。さぁ、丁度良いや、ルディシア君。一緒におやつを食べよう!」
早速、シルナのおやつタイムだ。
仕方ないな。イーニシュフェルト魔導学院の学院長室を訪ねるというのは、そういうことだ。
何人たりとも、シルナのお菓子攻撃を免れることは出来ない。
何なら、学院に来客が来てもチョコ菓子勧めてる始末だからな。
みっともないからやめろって、再三言ってるのだが。
今のところ、全く聞く耳を持たないシルナである。
「今日のおやつは〜、美味しい美味しいチョコタル、」
「どうですか。この国にはもう慣れました?」
「うん。気持ち悪いくらい親切な人ばっかで…本当気持ち悪いよ」
だ、そうだぞ。
「分かる。僕も最初来たときは、そう思ってましたから」
と、ナジュ。
そんなこと思ってたの?お前。
親切にされたなら、素直に喜んどけよ。
「食客っていうのは名目で、俺を監視したいんだと思ってたけど…」
「予想以上に自由が効くから、逆に居心地悪いんですよね」
「うん」
ルディシアは現在、聖魔騎士団の食客という立場で、聖魔騎士団に迎え入れられている。
ルディシアの実力なら、正式に聖魔騎士団魔導部隊に入っても、充分やっていけるとは思うのだが。
しばらくは大人しくしておいた方が良いだろう、というシュニィの計らいである。
ルディシアがルーデュニア聖王国に寝返ったことを知って、アーリヤット皇国がどう動くか…まだ分からないからな。
身を隠すという意味でも、しばらくは食客扱いということになった。
その方が良いだろう。ルディシアにとっても、新しい祖国に慣れる時間が必要だろうから。