神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
帰りも、行きと同じように。

ルイーシュの空間魔法で、一瞬でルーデュニア聖王国にワープして帰るつもりである。

これ本当便利。

でも、厳密にはこれ違法だから。国と国の移動は、国境検問所で正式な手続きを踏んでからでないと。

今回は特別だ。

「ルイーシュ、やってくれ」

「はぁ、面倒臭い…。これ、出張手当とか出ますよね…?」

「…出るって…」

無事にルーデュニア聖王国に送り届けてくれたら、シュニィに頼んどいてやるよ。

すると、そのとき。

「…ふわぁぁ…」

意識を失っていたベリクリーデが、ようやく目を覚ました。

あ、起きた…。

「あれ?ここ何処…。…あれ?なんか手が痛い」

と、ベリクリーデは怪我をした自分の腕を見た。

寝惚けてんな。一回戦のときの怪我だよ。

天音が治療してくれたから、出血は止まっている。

「あれ?決闘は?まだ始まってないの?」

きょろきょろ、と周りを見渡すベリクリーデ。

本当に寝惚けてるな。

「もう終わったよ」

「え、何で?いつの間に?じゃんけんで決めたの?」

じゃんけんで決められるなら、さぞや楽だったろうなぁ。

「寝惚けてんな、ベリクリーデ。お前が一回戦、勝ってくれたお陰だよ。無事にルーデュニア聖王国が勝った」

「…」

俺がそう説明しても、ベリクリーデはぽやんとして首を傾げていた。

自分が一回戦戦ったこと、ちゃんと覚えてるのか…?

「…よく分かんないけど、私達勝ったの?ジュリス」

「あぁ、勝ったよ」

「そっかー」

ジュリスに確認して、ようやく納得したベリクリーデである。

「お前のお手柄だ。…いや、厳密にはお前じゃないけど。でもお前の功績だから。帰ったら何か…好きなもの奢ってやるよ」

と、ジュリスが言った。

そうだな。なんか本人は記憶が吹っ飛んでるようだが、一回戦、ベリクリーデは大活躍だったから。

何でも好きなもの、奢ってやってくれ。

経費で落として良いぞ。

「本当?何でも?」

「あぁ、何でもだ」

「じゃあ、ジュリスのおにぎりが良い」

「安っ…。お前はそれで良いのか…?」

「うん」

可愛いな、おい。

ご褒美、ジュリスのおにぎりで良いのか。

シルナより安上がりだな。シルナはどうせチョコだろうし。

帰ったら絶対、「勝利記念に〜」とか言って、山程チョコを食べるに決まってる。

勝利記念は良いけど、先にルーデュニア聖王国の無事を確認してからにしてくれよ。

「あっ…。羽久がまた私に失礼なこと考えてる気がする…」

「気のせいだ。さぁ、早く帰るぞ」

これ以上、ミナミノ共和国に残る必要はない。

早いところ、俺達の帰るべき場所に帰るとしよう。
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