神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
…しかし。

俺はそのとき、気づいていなかったが。

「…?…??」

目を覚ましたばかりのベリクリーデは、きょろきょろと周囲見渡していた。

…まるで、違和感の正体を確かめるように。

「おい、ベリクリーデ。どうした?早く帰るぞ」

そんなベリクリーデに、ジュリスが声をかけた。

「ジュリス…」

「ん?どうした?」

「…ジュリスって、ジュリスだよね?」

「…は…?」

突然の意味不明な質問に、ジュリスは眉をひそめた。

「言ってる意味が全く分からないんだが…」

「私もよく分かんない…」

「でも、俺は俺だぞ。いつも通り」

「…そっか…」

そう呟いたベリクリーデは、納得したような納得出来ないような、微妙な表情を浮かべていた。

それを見て、ジュリスも怪訝そうな顔をしていたが。

ひとまず、その違和感の正体を確かめるのは後回しだった。

まずは、ルーデュニア聖王国に帰らなくては。

「ほら、帰るぞベリクリーデ」

「うん」

ジュリスに促され、ベリクリーデは素直に頷いた。

思えば…思えば、このとき既に、種は蒔かれていた。

しかし、当然ながら…俺達は全く、そのことに気づいていなかった。
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