神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
…帰りの道中、アーリヤット皇国側の代表団は。




「申し訳ありません、ナツキ皇王陛下…。我々が不甲斐ないばかりに」

「このような結果終わってしまいました」

ハクロとコクロが、不機嫌そうな皇王に謝罪した。

が、ナツキ様はそんなことは聞きたくなかったらしい。

うるさそうに、部下達を手で払った。

「全くだ。…この役立たず共め」

このときのナツキ様の…負け犬の顔を見られたら。

俺はさぞや、溜飲を下げたことだろう。

「だが…まぁ良い。最低限の目的は果たした」

ナツキ様が、やけに素直に引き下がった理由。

三回戦に、ハクロとコクロの二人を選んだ理由。
 
その裏にあるものを、俺達は知らなかった。

知る由もなかった。

「俺をコケにしてくれたこと、必ず後悔させてやる」

その言葉が、単なる負け惜しみではないことを。

ナツキ様は勿論、ハクロとコクロも承知の上だった。

俺達がこの言葉を意味を知るのは、もう少し先のことだった。
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