神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
詳しく聞きたかったけど、あの後すぐ三回戦があって、俺達も幻の世界でえらい目に遭わされて。
 
決闘の後は、急いでルーデュニア聖王国に帰ってきて。 

戦後処理、ならぬ決闘後処理に追われて、結局質問する機会を逸していた。

それに…マシュリがあの姿をについて、聞かれたくないのであろうことは…何となく察していた。

だから、聞かなかった。

聞けなかったのだ。

そして、無理に聞きたいとも思わなかった。

マシュリが自分から話したいなら、聞くけど。

マシュリが何に『変化』しようが、マシュリはマシュリだと思ってるから。

無理に尋ねて、マシュリの古傷を抉るような真似はしたくなかった。

それに俺は、幻の世界でマシュリから、あの姿について聞いていたから…。

確か、母親がバハムートの一族だったんだよな…?

いや、でもあれは幻の世界で聞いた話であって。

現実でもその通りかと聞かれたら、定かではない。

「竜か…。格好良かったよね」

「それなー」

中二病なお年頃の令月とすぐりは、非常にシンプルな感想を述べた。

いや、うん。まぁ…格好良いけども。

でも、マシュリが気にしてるのは多分、そういうことじゃないから。

「神竜族…って、僕詳しく知らないけど…。…強い?偉いの?」

天音が、ナジュに質問した。

「僕も詳しくは知りませんけど…。リリス曰く、冥界で一番高貴な種族だとか」

高貴(笑)。

…高貴…?

「竜って…高貴なの?」

「なんか強そうだから、高貴なんじゃないですか」

「あ、そう…」

まぁ、ただの竜じゃなくて、「神竜」だもんな。

いかにも高貴な…豪華そうな名前じゃないか。

ゲームのラスボスとかにいそう。バハムート。

「高貴な一族だからこそ、他種族との関わりを断って、冥界の隠れた場所に密かに住んでるらしいんですが…」

「へぇ…。イーニシュフェルトの里みたいだね」

「果たして、何故マシュリさんはそんな種族に『変化』出来たのか…。それを知られたくなかったから、敢えて僕を避けてたんでしょうね」

…だろうな。

マシュリが何に『変化』しようと、そんなことはどうでも良い。

だが、そのせいでマシュリが俺達の前から姿を消すなら、話は別だ。

それだけは許さないぞ。

「放課後までに見つけるって言ったんだから、見つけるぞ」

「でも…どうやって?マシュリ君が何処に行ったのか、検討が…」

「それは…」

あいつ人間じゃないから、エリュティアの探索魔法も通用しないし。
 
探すって言ったら、本当に虱潰しに探し回るしかない。

…それでも、ここでじっと待ってるよりマシだ。
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