神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
――――――…ただいまと言って帰ってこい、か。

そんなこと…初めて言われた。

天下の何処にも、僕の居場所なんて…帰る場所なんて、ないと思ってたのに。

ずっと自分の居て良い場所を探して、冥界や現世を彷徨い続けてきた。

何処に行っても、気持ち悪い、バケモノと石を投げられ。

『半端者』と呼ばれて、どんな種族からも迫害された。

ようやく手に入れた大切な人も、この手で引き裂いてしまった。

こんなどうしようもない存在に、居場所なんて出来るはずがないと思っていたのに。

…今はこうして、「ちゃんと帰ってこい」って怒られてる。

「勝手に居なくなられたら、探しに行くのが大変なんだからな」

「…」

何度僕が勝手に出ていこうと、帰ってくるまで待っていてくれる。

それどころか、僕を見つけるまで探しに来てくれる。

アーリヤット皇国の『HOME』のように、僕の力を利用するんじゃなくて。

ただ、僕というどうしようもない存在を、必要としてくれた。

僕のありのままの姿を受け入れ、共に同じ罪を背負い、共に生きると誓ってくれた。

これが…家。

僕がずっと欲しかった、帰るべき場所。

…この居心地の良い場所を、今度こそ僕は守ってみせる。

バケモノ、『半端者』と呼ばれたこの姿で。

心の中でそう誓って、僕は初めて。

自分の異形の姿が、少し誇らしく思えた。

…スクルト、君には見えていたんだろうか。

僕が生きる…この明るく、美しい未来が。
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