神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
…二時間後。
俺は、今度はちゃんと恵方巻きの材料を買ってきた。
米と寿司酢と海苔と、それから恵方巻きの具材となる魚介、その他。
「凄いね、ジュリス。お寿司職人だ」
具材を挟んだ酢飯を、巻きすで巻いて形を整えていると。
その様子を、子供のようにじーっと見つめながら、ベリクリーデがそう言った。
「ジュリス、お寿司屋さんやってたの?」
「いや、やってないけど…。昔何度か作ったことがあるからな」
昔取った杵柄、って奴だよ。
無駄に長く生きてると、妙なことが得意になるもんでな。
「ほぇー。美味しそうだね」
ちなみに、ベリクリーデには何も手伝わせていない。
本人は手伝うと申し出てきたのだが、俺が断った。
こいつに何か手伝わせようものなら、絶対二度手間になるから。
それならもういっそ、味見係でもやっていてくれ。
「こっちは焼き穴子、こっちはサーモン…。ベリクリーデ、お前は何が食べたい?」
「私、ツナマヨ挟んだ奴が良い」
「…安上がりな奴だな…」
マグロの刺し身とかエビとか、色々買ってきたんだけどな。
お前はツナマヨが良いのか。
まぁ良いや。本人の希望なんだから。
折角だし色々作って、部下達に振る舞おう。
いつもベリクリーデに振り回されて、苦労してるだろうからな。
そのねぎらいも込めて。
「ジュリス、こっちは?」
ベリクリーデは、スクエア型に入れて焼いたスポンジ生地を見つめていた。
「あぁ、それ冷ましてるんだよ。まだ熱いから触るなよ」
さっき、ベリクリーデが買ってきた材料で作ったんだよ。
折角だから、シルナ・エインリーが大量に注文したという、恵方巻き風ロールケーキ。
あれ、作ってみようと思って。
さすがに、店に注文したのと比べたら、安っぽさが残ると言うか…手作り感があるが。
折角買ってきたイチゴとかチョコレートとか、無駄にするのは勿体無いからな。
同じ理由で、小豆も煮てお汁粉にしたし。
シシャモも、調味料に漬けておいた。
あとはこれを干物にすれば、シシャモもみりん干しの完成だ。
「そっか。ジュリスは凄いねー」
「…凄さの度合だけで言えば、お前も相当だけどな…」
「鬼も、ジュリスの巻き寿司食べたら良いのにね。美味しいから、きっと何も悪いことしようなんて考えなくなるよ」
それはそれは。
何とも優しい世界だな。
お前はそのまま、ド天然で、しかし誰にでも優しさを忘れないベリクリーデであってくれ。
「さて、そろそろ出来るぞ。手、洗ってこい」
「うん」
この後、隊舎にいた部下を招いて、皆で節分パーティーを開いた。
何名かに、「何でお汁粉とロールケーキがあるんですか?」と聞かれたが…。
…それは聞かないでおいてくれ。武士の情けだと思って。
END
俺は、今度はちゃんと恵方巻きの材料を買ってきた。
米と寿司酢と海苔と、それから恵方巻きの具材となる魚介、その他。
「凄いね、ジュリス。お寿司職人だ」
具材を挟んだ酢飯を、巻きすで巻いて形を整えていると。
その様子を、子供のようにじーっと見つめながら、ベリクリーデがそう言った。
「ジュリス、お寿司屋さんやってたの?」
「いや、やってないけど…。昔何度か作ったことがあるからな」
昔取った杵柄、って奴だよ。
無駄に長く生きてると、妙なことが得意になるもんでな。
「ほぇー。美味しそうだね」
ちなみに、ベリクリーデには何も手伝わせていない。
本人は手伝うと申し出てきたのだが、俺が断った。
こいつに何か手伝わせようものなら、絶対二度手間になるから。
それならもういっそ、味見係でもやっていてくれ。
「こっちは焼き穴子、こっちはサーモン…。ベリクリーデ、お前は何が食べたい?」
「私、ツナマヨ挟んだ奴が良い」
「…安上がりな奴だな…」
マグロの刺し身とかエビとか、色々買ってきたんだけどな。
お前はツナマヨが良いのか。
まぁ良いや。本人の希望なんだから。
折角だし色々作って、部下達に振る舞おう。
いつもベリクリーデに振り回されて、苦労してるだろうからな。
そのねぎらいも込めて。
「ジュリス、こっちは?」
ベリクリーデは、スクエア型に入れて焼いたスポンジ生地を見つめていた。
「あぁ、それ冷ましてるんだよ。まだ熱いから触るなよ」
さっき、ベリクリーデが買ってきた材料で作ったんだよ。
折角だから、シルナ・エインリーが大量に注文したという、恵方巻き風ロールケーキ。
あれ、作ってみようと思って。
さすがに、店に注文したのと比べたら、安っぽさが残ると言うか…手作り感があるが。
折角買ってきたイチゴとかチョコレートとか、無駄にするのは勿体無いからな。
同じ理由で、小豆も煮てお汁粉にしたし。
シシャモも、調味料に漬けておいた。
あとはこれを干物にすれば、シシャモもみりん干しの完成だ。
「そっか。ジュリスは凄いねー」
「…凄さの度合だけで言えば、お前も相当だけどな…」
「鬼も、ジュリスの巻き寿司食べたら良いのにね。美味しいから、きっと何も悪いことしようなんて考えなくなるよ」
それはそれは。
何とも優しい世界だな。
お前はそのまま、ド天然で、しかし誰にでも優しさを忘れないベリクリーデであってくれ。
「さて、そろそろ出来るぞ。手、洗ってこい」
「うん」
この後、隊舎にいた部下を招いて、皆で節分パーティーを開いた。
何名かに、「何でお汁粉とロールケーキがあるんですか?」と聞かれたが…。
…それは聞かないでおいてくれ。武士の情けだと思って。
END