神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
…こんなところに猫が。

「まぁ…どうしたんでしょう、こんなところに…」

窓を開けてみると、猫がひょいっ、と室内に入ってきた。

一体何処から迷い込んで来たんでしょう。

…そういえばこの間、ベリクリーデさんが魔導隊舎の裏庭で、野良猫を追い回していたとか。

もしかして、その猫だろうか?

今日は、ベリクリーデさんには見つからなかったようですね。

「ちょっと待って下さいね。今、ミルクでも…」

ミルクを用意してこようと、猫に背中を向けたその瞬間。

不意に、背後から禍々しい気配を感じた。

驚いて振り向くと、そこにいたのは…。

「…え?」

抵抗することも、魔法を使うことも出来なかった。

ただ、反射的に飛び退いた拍子に、机の上のものが床に落っこちただけで。

私はあっという間に、「それ」の手に捕まってしまった。

意識を失う最後の瞬間、私の頭をよぎったのは。

死の恐怖ではなく、ただ私の愛する子供達と、そしてその子供達の父親。

アトラスさんの顔だった。
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