蜜別居?(2年振りに逢った旦那は隣に住んでました!浮気相手と一緒じゃなくて良かったです!)
「チーフ2階にお客様が来られてるそうです」

「今日は誰なのか言ってた?」

何だかデジャブのように笠木君から伝えられて一応来店した人物の名前を確認するけど「秘密」と言う返事を受けたらしい。

(この秘密の連鎖はどうにかならないの)

「…行ってくる」

笠木君に苦笑いをして足取り重く2階へと向かう。

三週間前の実家への里帰りは思わぬ“別居解消”と言うお土産を持って帰る事になり最近は誰かしら蘇芳に来ては呼び出しを受けてる。

3日前はうちの母とお義母さん
その前はうちの父とお義父さんと瀬名
その前は兄夫婦と波瑠
その前は義兄と瀬名

ずーっと御来店されてて今日は“誰?”とすら思わなくなって来た。

「何処だろう…」

2階は女性向け高級ブランドの店舗が入っていて小さなカフェスペースが男性向け店舗同様に備えてある。

「お疲れ様です。私にお客様って言われたんだけど」

女性スタッフに声を掛けると「あちらに」と言われた人物を見ると男性のお客様で覚えがない。

「お待たせ致しました。チーフの橘です」

帽子を目深に被り黒マスクの男性は私を見ると間合いを詰めてくる。

「分かんないの?夏生よ」

目深な帽子から見え隠れする顔は夏生さんに見える。

「本当に夏生さん…ですか?」

小声で話しかけると「誰も来ないようにして」と低めの声で言われてVIP専用の部屋へ案内する。

「あ〜疲れた!男の真似って本当面倒臭い」

革張りのソファに長い脚を組む姿はやはりオーラ共々一般の人とは違う。

「今日はお忍びですか?瀬名呼びます?」

彼の素性を知ってるとは言え二人っきりでは話す内容も見つからない。
浮気相手と思って見てたから尚更二人っきりは誤解だったとしてもやはりキツい。

「私が嫌いなのよね?私もアンタ嫌い」

初めて会話をしたのに敵意むき出しでさすがに私もカチンとくる。

(お客様…彼女の発言次第で蘇芳の印象が)

熱を冷ますように言い聞かせる。

「今日は何か御用があるんでしょうか」

とにかく冷静に彼女を迎え撃つ。
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