蜜別居?(2年振りに逢った旦那は隣に住んでました!浮気相手と一緒じゃなくて良かったです!)
「別居中の奥さん。今日は打ち合わせで来ただけ。詮索するくらいならオススメ早く出せよ」

「はいはい。そう言う事で…奥さ、いや橘さんは嫌いな物ありますか?」

奥さんの呼び方に私の表情が変わったのを直己さんは気付いて旧姓呼びに変えてくれた。

「あぁ〜赤身の魚とキノコ類は苦手だから使わない料理を頼むな」

「食べれるし!」
「無理すんな」

「仲が良いのか悪いのか。まあ美味しく食べて貰いたいからそれは使わない物で出しますよ」

キーっと睨み合う私達に気を遣ってくれる直己さんに申し訳なくて彼の判断に首を縦に振る事しか出来なかった。



運ばれて来た数々の料理は絶品でお財布の事は“カードを切るしかない”と腹を括った。

フレンチと和を融合させた料理に舌づつみを打ちさすがにワインは飲まず炭酸水で喉を潤す。

「接待してるんですから企画潰すとかやめて下さいね」

食後のデセール(デザート)フォンダン・オ・ショコラの中心部にフォークを刺すとチョコレートソースがとろーりとした液状になって抹茶を混ぜた生クリームの元へ流れて行く。

「そんなの元々するわけないだろ?こっちだって今更リスクを負うような事はしない」

“じゃあ何の打ち合わせよ!”と毒付きたいのを我慢してチョコレートソースとケーキ部分を口に入れて幸せな気持ちになる。

「安見様も食べます?」

「食べない。それよりいつまでその態度続けんの」

他人行儀な態度がずっと気に要らないらしいが私からすれば仕事と割り切るしかない。

瀬名はエスプレッソを頼みシュガースプーン山盛り1杯分の砂糖を優しくカップに入れて口に運んでいく。

昔から甘い物が苦手な彼は疲れた時だけコーヒーに砂糖を入れる。

「仕事上の御付き合いですから当たり前です」

それ以上も以下もない。
打ち合わせで接待をしただけで大人なら普通の事でそこに別居中の夫婦とかは関係ない。

「後、自宅も実家も隣同士だしな」

クスッと笑って瀬名は席を立って出て行った。
携帯は置かれたままだからトイレにでも行ったんだろう。


ヴーッヴーッ…


携帯のバイブ音に驚いて画面が目が入り見えてしまった。

忘れもしない浮気相手だったモデルの夏生(なつみ)の名前と雑誌と同じ顔のアイコン。

「まだ付き合ってたのか…」

彼女には打ち合わせとでも言ってるんだろう。

あれから2年…

まだ私と離婚してないこの状況を彼女はどう思ってるんだろう。
瀬名はモテるからまだ遊びたいのかも知れない。
それに私贔屓(びいき)の義理の父母は離婚が正式に決まっても許さないのかも知れない。

離婚もしてない私から義理の両親に“結婚させて上げて”と言うのも変な話。

カチャと個室のドアが開いて瀬名は何食わぬ顔をして入ってきた。

「そろそろ帰りましょう」

私が席を立つと瀬名は不思議な顔をして私を見たけど携帯の着信ランプに気付き軽く画面を見て何も言わず席を立った。
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