bouquet

『仕事終わったら俺の家来て。泊まって行っていいから』

絵文字もスタンプもないシンプルなメッセージは、いつもの快斗の文章だ。しかし、桃華の胸の中の騒めきが収まることはなかった。



午後五時。仕事が終わり、桃華は「お疲れ様でした」と声をかけ、店を出る。ただのお泊まり会になるのか、それとも浮気をしていることを打ち明けられるのか。不安が押し寄せてくるものの、ダラダラしていれば「彼氏の家に行かないの？」と言われてしまうため、桃華は重い足取りで快斗の家へと向かう。

快斗が住んでいるのは、まだ新しく建てられたばかりのマンションの五階の角部屋である。何度も桃華は遊びに来たことがある部屋だ。

「快斗、来たよ」

玄関の横につけられたインターホンを、桃華は緊張を覚えながら押し、声をかける。すぐにドアは開き、中から快斗が姿を見せた。

「急に悪いな。来てもらって」

「ううん。大丈夫だよ」

桃華はいつも通りを心がけ、笑みを浮かべる。玄関で靴を脱ぎ、快斗に案内されていつものようにリビングに入る。