ハイスペ彼氏は彼女にゾッコン
「有り得ない…」
ボソッと聞こえた桃田さんの声。
彰人と私が顔を向けると、桃田さんは至極嫌そうな表情でこちらを睨んでいた。
「なんでそっちなんですか? 絶対私の方が可愛いし、色気もあるのに……。
私を無視して、加屋さんみたいな普通の人を選ぶ意味が分からないんですけど」
ジロっと睨まれて、私は怒りと恐怖を同時に抱く。
年下にこんな言われ方されてムカつくけど……可愛い子に睨まれてビビッてしまうヘタレな私。
「私の理想は須崎さんなんです。須崎さんも自分のレベル理解してるなら、それに釣り合う人を選んでいいと思いますよ。
加屋さんは一般的に見ても、須崎さんと釣り合ってません」
「……」
スッ…と
彰人は私から離れて。
スタスタと桃田さんの方へ近寄って行く。
「あのさ、桃田さん」
「…はい」
「同じ会社の同じ部署で働いてるし、皆の前とかで気まずい思いさせたら悪いなと思ってたの、俺は。」
いつもと違う、淡々とした低めのトーン。
親しみやすい柔らかな雰囲気は一切無くなっている。