再び異世界?!─平凡聖女の育てた少年が、年上魔公爵になって貫く健気過ぎる激重純愛♡─
セーラの腕の中の赤ちゃんはスースー安らかに眠っていた。
アイビンは聖女に抱かれて光の中で健やかに眠る赤子の純粋さに、グッと唇を噛んだ。
だが、召喚士は国にたった一人、聖なる神力魔法が使える選ばれた天才だ。
だからわかる。
その赤子に宿る禍々しい魔力の恐ろしさがわかるのだ。
「聖女様、ソレは今まだ赤子ですが、大きくなれば人を脅かすとわかりきっています。
誰も傷つけていない今のうちに殺すのが人間にとって、大きな利益となるのです。
魔王は、厄災なのです!!」
アイビンにも己の発言が惨いのはわかる。だが、正義に犠牲はつきものだ。
アイビンは人間の正義を主張した。
「違うよ、アイビン」
セーラは静かに首を横に振る。この異世界では聖女の証の長い黒髪がなびく。
アイビンの主張に正義はない。
「そんなのは脅威になるかもしれないものに、怯えてるだけだよ」
セーラは腕の中で眠る小さな命を再び抱き締めて、重みを感じた。
「アイビン、私は最高位なのよね」
「え……はい」
黄緑色の髪を振り乱したままのアイビンが小さな声で返事をする。
「誰も、私の決定に逆らえないんだよね。権力ってこういう時に使うのかもしれない」
天井が高い玄関ホールの真ん中で、セーラと赤ちゃんを祝福するように光が降り注ぐ。セーラはにっこり笑った。
「聖女は、魔王を育てることにします!」