再び異世界?!─平凡聖女の育てた少年が、年上魔公爵になって貫く健気過ぎる激重純愛♡─
跪いたマオは眉を下げたまま、セーラの手を優しく撫でた。
「セーラを召喚したくて、魔法の勉強はたくさんしたんだ。召喚士の神力魔法が使えるようになりたいって……数えきれないくらい思ったけど」
眉を歪めて苦しそうな声を出したマオに、セーラは目をぱちくりさせた。
「どんなに魔法を使いこなしても、
魔王に神力はないんだ。
僕の力でセーラを取り戻せないことが、本当に、悔しかったよ」
軽く聞いただけだったのに、思いのほか重い返事だった。セーラは地雷踏んだ気持ちだ。
(そんな顔させるつもりじゃなかったのに)
セーラを己の力で召喚できず過ごした苦悩の時間と口惜しさが伝わってきた。
「セーラ、どこにも行かないでね。この部屋から一歩でも出たら、今度は歩けなくなる魔法が発動するかも」
「魔王ジョーク、レベルアップきたー!」
セーラが地雷を踏み抜いたことを蹴散らそうとケラケラ笑うと、マオは金色の瞳を細めた。
二人の話を聞いていたビンビンは疑念が膨らむのを止められなかった。
(今夜、マオ様はどこへ?復興作業よりも、愛する聖女様の護衛よりも優先する事なんて。
まさか、人間を石化させに……だなんて、まさか、そんな)
ビンビンはその夜、眠れなかった。