再び異世界?!─平凡聖女の育てた少年が、年上魔公爵になって貫く健気過ぎる激重純愛♡─
アイビンはため息をつくが、セーラはマオを抱っこして今来たばかりの道を引き返した。
聖女屋敷に到着するとマオはすっかりご機嫌になって、セーラの腕から下りて慣れた部屋へと自ら走って行った。
「セーラあそぶー!」
見守っていたアイビンとセーラは顔を見合わせて笑った。
「子どもらしい姿には安心して笑えます」
「でもどうして、お散歩がイヤだったのか……あ、雨?」
今まで真っ青に晴れていたはずの空に、いつの間にか暗雲が広がり雨がぽつぽつと降り始めた。
聖女屋敷の軒先の下から、セーラとアイビンは空を見上げ、揃って目をパチパチさせた。
マオが雨を予期したかのような、タイミングの良さだった。
「セーラ!本よんで!」
「あ、マオ絵本持ってきてくれたんだ、いい子だね」
一目散に走って行ったマオはお気に入りの絵本を持ってきて、セーラをベンチに座らせてその膝に飛び乗った。
癇癪一つで花畑が吹っ飛びそうだが、収まれば可愛いものだとアイビンは目を細める。
(大地より生まれた魔王だ。自然の声が聞こえ、雨を予期したとしても不思議ではないかもしれない)
「マオはこの絵本が、とっても好きね」
「あーい!」
セーラはマオにおねだりされたなら、同じ本を何度でも読み続けた。膝の上で笑いながら、日々成長していくマオが愛しくて可愛くて仕方なかった。