再び異世界?!─平凡聖女の育てた少年が、年上魔公爵になって貫く健気過ぎる激重純愛♡─
召喚士の杖をつき年老いたアイビンが、紙だらけのマオの部屋を訪れて眉をひそめている。
『また聖女様へのラブレターか?飽きないなマオは』
『僕はセーラしか愛せないから』
『そうだな。それで、私が死んだら、何を始めるつもりだ?私の目を誤魔化せると思ってるのか?』
机に向かって書き物に必死だったマオが振り返ると、アイビンが皺深い黄緑色の瞳を細めた。
何でもお見通しの目だ。
『アイビンには敵わないね』
マオはため息をついて、アイビンが死んでからの人間石化計画を話した。内緒にするつもりだったが、セーラが消えてから見守り続けてくれてた恩人に仇は返せなかった。
そう、いい子に育てられたから。
『笑えるな』
マオが正直に計画の全貌を話すと、アイビンはシワシワの顔をもっとしわくちゃにして笑った。
『マオならできる』
アイビンは、マオに生涯使い続けた召喚士の杖を渡した。
生前の形見分けだった。マオは正直に眉をしかめた。アイビンには本音を隠さない。
『どうやっても召喚士の神力魔法が使えない僕に、召喚士の杖を遺すなんて嫌味じゃない?』
『まあ、もらっておけ。役に立つときもあるかもしれないからな』
『……まあ、せっかくだから、もらっておくよ』
『ああ、私が死んでもいい子でな、マオ』
マオが懐かしい夢から目を覚ますと、腕の中ではセーラがクークー静かな寝息を立ててマオの胸に全体重を預けていた。
(もう少しでやりきれるよ、アイビン)
マオは原型がなくなりそうなほどに表情を緩めてセーラを優しく抱き締めた。