再び異世界?!─平凡聖女の育てた少年が、年上魔公爵になって貫く健気過ぎる激重純愛♡─
ビンビンと同じように、セーラも王城内をやみくもに走った。
聖女屋敷に戻るには雨が降り過ぎている。セーラは走って走って、人気のない客室に逃げ込んだ。口から嫉妬が噴き出しそうなのを抑え込むためだ。
暗い客室には、豪華な天蓋付のベッドが一つと、小さな灯りが一つ灯っていた。
セーラがドアを背にして荒げた息を落ち着けようと深く息を吸った瞬間、ドアに押された。
ドアを抑え込む間もなく、正装したマオが息一つ切らさずに入ってきた。マオがじっとりと熱い目でセーラを見下ろす。
「マオ、私、今ちょっと一人になりたいの」
「できないよ、セーラ。セーラの言うことなら何でも従いたいと思ってるけど、今はできない」
「どうして」
「だって、セーラの顔に、僕が欲しいって書いてあるから」