再び異世界?!─平凡聖女の育てた少年が、年上魔公爵になって貫く健気過ぎる激重純愛♡─
マオの光に透ける金色の猫毛を優しく撫でて、セーラはアイビンを見つめた。
「アイビンはマオを怖がってるけど、理解を示そうとしてくれる。アイビンだけが頼りなの。
私が聖女の役目を終えていなくなったら、
マオのことお願いね」
「……聖女様の、ご命令とあれば」
「命令じゃないの。お願いよ。マオを一人にしないでね」
聖女は「魔王の脅威を退ける」ために召喚されている。
マオがきちんと倫理観を持って成長し、魔王として凶行に及ばないとわかったなら、脅威が去ったと言えるだろう。
そうなれば、セーラは元の世界に帰るのが道理だ。
セーラは魔王に楔を打たずとも、平和を手にしてみせる。
魔王を殺すのではなく、
魔王をいい子に育てる。
それが平凡なジャパニーズ聖女、セーラの選んだ道だ。
「マオは人を傷つけたりしない。大丈夫よ、アイビン」
陽だまりの中で猫のように眠る可愛いマオを撫でて、セーラは自信に満ちて笑った。
聖女が育てた魔王は、
人を傷つけたりしない。
そう思っていたのに。
世間様は、マオを放っておいてはくれなかった。