再び異世界?!─平凡聖女の育てた少年が、年上魔公爵になって貫く健気過ぎる激重純愛♡─
セーラが頭を抱えて天を仰ぐと、アイビンも同調した。エルトン豚野郎がそこにいるかのように、アイビンが召喚士の杖を構えて戦闘態勢を見せる。
泥まみれのマオは味方ばかりの空間に居心地が良くて、クスクスご機嫌に笑った。
4歳のマオは10歳の同級生たちの誰よりも賢かった。
公爵のバカ子息、エルトン(豚)野郎が、何度となくマオを魔王呼ばわりして揶揄っても、一度もキレたりしなかった。
一言の嫌味も言い返さず、マオはただ黙って耐えている。
マオは魔王として恐れられるような行動を一切しないと誓っていた。
魔王と呼ばれ、厄災と恐れられる生物であるマオが、人間社会で居場所を確立するためには
「僕はいい子です」と、
周囲に証明し続ける必要があったからだ。
マオが生まれながらに背負った、重すぎる業だった。
「セーラ、膝枕して?」
泥を落として小綺麗になったマオは誰よりも美しい少年だった。
こんな可愛い子をいじめる豚野郎の方が人間ではない。イジメやる豚、ただの豚だ。
陽だまりソファに座るセーラの前でマオがおねだりすれば、セーラが両手を広げる。
「もちろんいいよ、おいで。今日もよく頑張ったね、マオ」
セーラの膝に頭を預けて寝転がったマオは、ほっと一息ついて和らいだ顔になる。
「全然平気。豚ごときに何されても響かないよ。僕にはセーラがいるから」
「4歳が誰より大人ぁ!」