再び異世界?!─平凡聖女の育てた少年が、年上魔公爵になって貫く健気過ぎる激重純愛♡─
セーラが嬉しさをこめてぎゅうとマオを抱き締めようとしたのに、その手はマオの身体をすり抜けた。
「え」
「え、なに?どういうこと?」
セーラの膝が透け、膝の上から落ちてたマオがベンチの上に直接座ってしまった。
セーラの身体に触れられない。
「うそ、セーラ?!何!何なんだよこれ!!」
セーラは自分の透けた両掌を見てリミットを知った。元の世界に帰る時が来たのだ。
「マオ、私帰るみたい」
「いやだ!セーラ嫌だ!行かないで!」
マオの悲痛な叫びを聞いて、二人を追いかけて来たアイビンが走ってきた。
「聖女様……!」
透けて消えゆく聖女にアイビンは釘付けになった。セーラは鼻の奥から湧きあがる涙をこらえてマオに何を言い残そうか考えた。
いつも考えていた。
この瞬間が来たら何を言おうかって。