再び異世界?!─平凡聖女の育てた少年が、年上魔公爵になって貫く健気過ぎる激重純愛♡─
セーラは赤ちゃんを放っておけず、抱いたまま聖女屋敷に連れ帰った。
屋敷の玄関でセーラを迎えた召喚士アイビンは、黄緑色のギョロ目を零れ落ちてしまいそうなほどに見開いて叫んだ。
「聖女様!その赤子は魔王です!!」
「え?!」
セーラが優しくふわふわと腕に抱いた赤ちゃんに向かって、アイビンが召喚士の武器である杖を構えた。
アイビンは耳の横に束ねた髪を振り乱してさらに厳しい声を張り上げた。
「聖女様、その子に楔を打ち込んで、
今すぐ殺してください!」
セーラの腰にはアイビンに持たされた五寸釘が常備してある。だが、そんなものに手を伸ばす気にはならない。
あまりにも無情な台詞にセーラはぽかんと口が開いた。
「なんてこと言うのアイビン……!」
セーラがアイビンの杖の先から赤ちゃんを隠すと、アイビンの眉がクッと険しく歪んだ。
「聖女様こそソレを守ろうだなんて、笑えません」
アイビンの声は低く、ジョークには全く聞こえない。顔は真剣そのものだ。
だが、こんなに無垢で可愛い赤ちゃんに五寸釘を打つなんて発想自体に、セーラは理解が追いつかなかった。
セーラはぽかんと開いた口から言葉が零れた。
「赤ちゃんに楔なんて刺したら、
どっちが魔王かわからない」