静穏総長も、時には激しく愛したい
「どうしたんですか、奏さん」
「さっき襲われかけたのに、いま元気すぎて引いてただけ。それにしても、なんで名前呼びなわけ?」
「いいじゃないですか、奏さん!」
さっきまで襲われかけた私が、こんなにも元気な理由。それにはちゃんと、理由がある。
一つ、奏さんと同じ高校だったこと
二つ、奏さんがめちゃくちゃ強いこと
三つ、奏さんがスーパーイケメンなこと
こんなの……お近づきになるしか、ないじゃん! 王子様みたいな人に、彼氏になってもらうしかないじゃん! そうしたら、また襲われた時、守ってもらえるじゃん!
「好きです……って言ったら、怒りますか⁉」
「むしろ呆れる。白い目で見る、そして無視する」
「そんな冷たいコト言わないでください、奏さん!」
ギュッと、腕に抱き着いた私を、まるで飛んできた蚊を払うように。奏さんは、シッシッと手で追いやる。
そして近くの溝に、持っていたナイフをカランと落とし……。二度と取り出せない場所へと、ナイフは流れて行った。