静穏総長も、時には激しく愛したい
「あ、えっと……今日は……、」



澪音が顔を下げて、何やら言い淀んでいる。しかも思い詰めた顔で。

かと思えば、パッと顔を上げて俺を視界にとらえる。

そして、まるで「今いる事に気づきました」と言わんばかりの顔で、



「か、奏さん……っ!?」



眉を下げて、今にも泣きそうな顔をして……切なげに俺の名前を呼んだ。



「澪音……?」



なに、その顔。

「会いたくなかったのに会っちゃった」みたいな顔。



「澪音、その顔……」

「え……?」

「いや……」

「……」



時間が止まったみたいに、澪音も俺も続きを話せないでいた。言葉が、出てこない。静かなこの場では、車の走行音が聞こえるだけ。

すると”すみ”が、澪音の後ろに一歩下がる。そして、なんと純白にお辞儀をした。


ペコッ



「……今日は先約がありますので。私どもは失礼します」

「あぁ、そっか。今は色々大変だろうしね。

澪音ちゃん、体には気を付けて。しんどくなったら、きちんと休むんだよ」
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