静穏総長も、時には激しく愛したい
「澪音が、お嬢様? 結婚……?」
「そう。さっき一緒にいた男は”澄”っていう、澪音ちゃん専属の執事だ」
「”澄”……」
そういう事だったのか。
俺の予想は、見事に的外れだった。失笑する。
でも、それ以前に……澪音の事を何一つ知らなかった自分に、愕然とした。
「そうか……だから、よく狙われていたのか。金持ちの娘だから」
「やっぱり狙われてたんだ。暴走族から?」
「俺のことを知っていた奴らだったから、暴走族だろうな。
襲われていた日から、澪音は何かを隠してると思っていたけど……。まさか、こんな事だったなんて」
「……そりゃ、ビックリするだろうね」
俺の混乱を察したのか。純白は、壁によりかかり、しばらく黙った。
だけど「まさかなぁ」と。端正な顔を歪める。
「姫を守るナイトは執事だけかと思ったけど、君もだったなんてね。なんていうか、すごい偶然だ。
君が澪音ちゃんを特別視しているのは、さっきので充分わかったよ。だからこそ……イヤだなぁ。
俺が瀕死になった夜に助けてくれたのは君なのに。そんな君から澪音ちゃんを奪うなんて。まるで恩を仇で返すみたいだ」