静穏総長も、時には激しく愛したい
「ま、ちょうどいいや。”澪音ちゃんに接触するな”って、釘打とうとしてたしね」
「”俺の婚約者に近寄るな”って事?」
「違うちがう~」
違うなら、なんだ?
内心イライラしながら、次の言葉を待つ。
「もしも君が澪音ちゃんと付き合うことになったら、って想像してみなよ。
お嬢様で総長の彼女なんて――敵が多すぎる。裏社会のいいカモだ」
「そうだけど……。そんな心配、もういらないだろ。俺と澪音は……住む世界が違う」
「――……悔しいけどさぁ、」
純白は少し声を低くし、俺ではなく、遠くを見つめた。その方向には、澪音が通った道がある。
「澪音ちゃんが君のことを好きなのは知っている。どうせ君も”そう”でしょ?
だからこそ接触するなって言ってんの。駆け落ちなんてしても、その先に彼女の幸せは無いからね」
「ッ! ……分かってる」
そんなこと、分かってる。
言われなくても、痛いほど分かってる。
ただ、その現状を変えられない無力な自分に、辟易してるだけだ。