静穏総長も、時には激しく愛したい
ギュッ
さらに拳に力を入れたのを見て、純白は「おっと」と両手を挙げた。
壁から背を離したところを見れば、どうやら話は終わりらしい。
「君が納得してくれて良かった。正直、殴られる覚悟はしてたんだ」
「……誰がするか」
「うん。思えば、千秋くんは出会った時から優しかったもんね。見ず知らずの俺を助けてくれた。おかげ様で、五体満足の体で幸せな家庭を築けそうだ。感謝するよ」
「……」
何の地位もない俺に、お嬢様である澪音を救うことは出来ない。
ならば黙って手を引き、見守るのが筋ってもんだ。
「アイツのこと……幸せにしてやって」
あとは、願うだけ。
俺の事を好きでいてくれた澪音が、この先ずっと幸せでいられますように。
いつまでも笑っていられるように――と。
だけど、
「はぁ……本当、反吐が出るね」
純白は、心の底からため息をついた。見間違いかもしれないが、顔には青線さえ浮かんで見える。