静穏総長も、時には激しく愛したい

「総長~、こんな所にいた。今日は仲間が集まる日ですけどー?」

「そうだったな……悪い、俺ナシで適当にやって」

「総長ナシで暴走族は成り立ちませんってー!」



ウガー!と声を荒げる睦。

だけど俺は、純白に言われた事を考えながら、この場を去る。睦を、一人残して。



「総長~……行っちゃった」



俺の後ろ姿を見て、睦はポリポリと頭をかいた。



「いつもながら人畜無害の穏やかな総長だなぁ。燃えるような闘争心を、たまには持てっての」



暴走族ってのは組織が大きくなってこそ価値あるもの――

そう考える睦は、今の【青翠】に不満があるのか。近くにあった木の枝を、固い靴底でベキッと折る。



「はーあ。本当、激萎え。

俺の【青翠】を弱くするなっての」



普段の睦からは想像もできない低い声が、まるで災いを告げる合図かのように。

低く大きく、不気味にこだました。



*奏*end

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