静穏総長も、時には激しく愛したい
『お見合い当日、お嬢様は世界で一番かわいい”お姫様”になります。
ですから美容関係、いろいろと予約を入れさせてもらいましたからね』
『へ?』
『どのおとぎ話でも”お姫様”は、最後は幸せになるんです。お嬢様も、そうなんですよ』
『!』
美容に磨きをかけるのは、言わばゲン担ぎみたいなもので……おまじない、そのもの。
私が当日お姫様みたいにキレイに着飾れば、結婚後も幸せでいられるって。澄はそんな風に思ってくれてる。
そんな澄の気持ちを無下に出来ないから「余計な予定はいれないで」なんて……ヒドイ事は言えない。
「それに時々、澄が寂しそうな目をするし……。あんな目をされちゃ、何も言えないよ」
「なにー? 千秋先輩のこと?」
水面下で、私のお見合い話が進んでるなんて微塵も知らないふくちゃんは、私が奏さんの事で悩んでいると思ってるみたい。
でも、確かに……この前は、ビックリした。
奏さんに、純弥さん。それに澄に、私――皆が一堂に会した日。