静穏総長も、時には激しく愛したい
「私、他に好きな人が出来たんです。その人と……結婚します。
だから……」
「……」
奏さんは、私の話を聞いても、眉一つ動かさない。好きな人がいると言っても、結婚すると言っても。
どうでもいいのかな?
やっぱり私には、全く興味がなかったのかな?
でも……ううん。
なら、ちょうどいいや。
もしも奏さんが私の事を好きだったら、余計に離れがたくなるから――
「……それってさ」
「え?」
奏さんが、突然に口を開く。
まさか何か言ってくれるとは思わなくて、潤んだ瞳のまま、奏さんを見た。
すると、奏さんも私を見ていて……陽光が当たり灰色に見える綺麗な瞳と、視線がぶつかる。
「澪音の好きな人も、結婚する相手も。
それって、俺のことじゃないの?」
「――……へ?」
「違うの?」