静穏総長も、時には激しく愛したい
と思っていたら、
「ちょっと待て。
今、婚約者って言ったか?」
「うん。言った言った~」
「は? 婚約者!?」
綺麗な顔をぐにゃりと曲げて、春風さんは純弥さんを睨む。
「若桜は大企業どころか、日本を代表する会社だぞ。なんでそんな会社の娘と”白いの”なんかが結婚出来るんだよ」
「”俺なんかが”って言い方、すごいムカつくんですけど~」
今の言い方だと……やっぱり春風さんは、若桜グループを知ってるみたい。
そして純弥さんの事を「白いの」って呼んでるのかな? ど、独特な呼び方……。
「あれれ、言ってなかったっけ?
俺の両親、一回離婚してるじゃん? 母さんが負けず嫌いでさぁ、男なんかいらないくらい稼いでやる!って宣言して会社つくって以来、今ではそこそこ有名なんだよ~」
「若桜に認められてるなら、”そこそこ”じゃなく有名だろ」
「そうかも~」
呆れた声でため息をつく春風さん。
だけど……その瞳に、影が落ちる。