静穏総長も、時には激しく愛したい
純弥さんは、ひょいと飴を口に入れる。
そして飴は噛むタイプなのか「ガリッ」と歯をたてた。
「千秋くんはイイなぁ、幸せ者だね。澪音ちゃんに、あんなに想われてさ」
純弥さんは、私が戻った道を目で追った。「俺は好きな人に好かれた事がないからさ」と、言いながら。
だけど――
「じゃあ美月も幸せだったろうな」
「なんで美月?」
「白いのにアレほど好かれて、不幸なわけないだろ」
「!」
すると純弥さんは、口の中の飴を噛まずに、コロロと舐める。
甘い味が口の中いっぱいに広がったのか、思わず目じりが下がった。
「確かにね。彼氏がいるのに諦められないほど、俺は美月のことが好きだね」
「彼氏の俺に言うことじゃないだろ」
「うるさい。俺の美月を、横からかっさらいやがって」
「お前の美月じゃない」
春風さんは、呆れた声を放つ。
だけど、その後。
「いいじゃん」と。
近くの壁に、背を預けた。