静穏総長も、時には激しく愛したい



怖い――



今まで暴走族や不良は、怖いと思えど、ここまでの恐怖を覚えた人はいなくて……。むしろ、会う人会う人みんなが優しくて、和むことすらあった。


元総長の純弥さん。
最強ランキング一位の春風さん。

そして、いつも静かで穏やかな、奏さん。



「(だけど、この人は違う……!)」



この人が「殺す」と言ったら、たぶん殺すだろう。「襲う」と言ったら、確実に襲うのだ。

この人は言った事を必ず実行する人だと、雰囲気だけで分かる。


ギリッ



「ぁ、う……っ」

「その苦しそうな顔、たまんねぇなぁ」

「……~っ」



苦しくて、生理的な涙が流れた時。
ふと、昔のことを思い出した。

あれは確か、初めて奏さんに会った時のこと。



――その正義感ナゾすぎ。相手の神経を逆なでする行為でしかないから、やめときなって



以前、奏さんに注意された事なのに。スッカリ忘れて、こんなヤバい人に正論をふりかざし、殺されかけている。

私は、大バカだ。
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