静穏総長も、時には激しく愛したい
「ごめ、なさ……。か、なで……さ、っ」
「奏? あー、千秋奏か」
パッ
夕暮は、私の首から手を外した。
「――ひゅ、ゴホ、ゴホゴホ……ッ!」
一気に口に入った酸素にむせ、咳が止まらない。
そんな私を見て、当たり前だけど「大丈夫か」なんて言わない夕暮は……懐かしむように、昔話を始めた。
「少し前、春風と話してたキレ―なねーちゃんがいたんだ。いやに真っ白だったから、すげー目立ってな。
だから襲いやすかったぜ。すぐに見つけることが出来た。
けど”これから”って時に逃げられた。そのねーちゃんを助けたのが、千秋奏だ」
「へ……?」
「それからは千秋奏に近づく女も”襲う対象”にしてたんだが……。
女っ気のねー奴だったな。女と一緒にいるところを見た事がねぇから、襲いようがなかった。つまらねぇ奴だ」
「そ、それって……」
キレイなねーちゃん――でピンと来た。
学校で流れたウワサと、かなり似ていたから。