静穏総長も、時には激しく愛したい
夕暮の拳を受け止めた人――奏さんは夕暮の拳を払った後。膝を曲げた状態から回し蹴りをし、夕暮の顔に、重い一発を入れる。
いきなりの攻撃で防御が間に合わなかった夕暮は「ガッ⁉」と叫び、遠くまで吹っ飛んだ。
ガシャンッ
「(す、すごい……っ)」
奏さんのケンカを見るのは、初めて会った時以来。相変わらずの早業に、思わず目が点になる。
その間に、奏さんは私を抱き上げ、お姫様抱っこをした。
ふわっ
「(あたたかい……)」
途端に安心感に包まれ、体の力が抜ける。
あぁ私、今、
大好きな人に抱きしめられてるんだ――
「奏さ、私……っ」
「澪音、ケガは? 何もされてない?」
「な、何も……っ」
本当は、色々あったような気がするけど。でも、もういい。だって、奏さんが助けてくれたから。
そう思って気丈に笑うと……奏さんは、キュッと瞳を細めた。
「何もって事は、ないでしょ……」