静穏総長も、時には激しく愛したい

その瞳の奥に、夕暮が私に馬乗りになった、さっきの光景が写ってる――なんて知る由もなかった私は「奏さん?」と、首を傾げた。

すると、



「……ねぇ、澪音」

「! は、はいっ」



久しぶりに名前を呼ばれて、こんな時だというのに胸が高まる。

あれ、名前を呼ばれるのって……こんなに嬉しいものだったっけ?


だけど――胸がキュンと高鳴った私とは反対に。奏さんはとんでもない事を言った。



「あの男を殺したいんだけど、いい?」

「……へ?」



奏さんの事は、なんとなく理解してきたつもり。

穏やかな雰囲気で、肝心な事は何一つ話さないほど静かな人。


だけど、たまに。
本当に、たまにだけど。



「俺の澪音に手を出したこと。その身に刻み込んで、教えてやらないとね」

「――っっ」



奏さんは、時どき激しい。


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