静穏総長も、時には激しく愛したい
よく言えたね、と。
男の子――ひかりを抱きしめる私。
そんな私を、奏さんはぶすっとした顔で見ていた。
「その顔を見てると、千秋は夜野と似てるな」
「春風……。夜野と似てる? 俺が?」
「心が狭いことで有名なんだ、アイツ」
「……」
春風さんはフッと笑った。余裕そうな笑みを浮かべて。
だけど次の奏さんの言葉で、それは簡単に崩れる。
「じゃあ春風の彼女とあの子供が、幸せそうに抱き合ってたらどうするんだ」
「もちろん引きはがす。抱き合う前にな」
「……」
俺より心が狭い奴に、俺はケンカで負けるのか――と。奏さんはため息をついた。
すると同時刻、夜野さんの方も終わったらしい。
「ってことで、一人さみしく警察に世話になるんだね。夕暮嵐太」
「な! お、俺は!」
「……ばいばい」
ゴキッ
夜野さんが、夕暮さんを力いっぱい殴った。すると激しい衝突音と共に、夕暮は気を失う。
それを待っていたかのように、遠くからパトカーのサイレン音が聞こえた。