静穏総長も、時には激しく愛したい
それなのに純弥さんは、私の事を一番に考えて、いつも笑ってくれて……。悲しかったはずなのに。
「ごめ、なさ……、純弥さんっ」
「え、泣かないでよ~! 隠してた俺が悪いんだから。澪音ちゃんが謝ることは、何一つないよ」
「で、でも……っ」
純弥さんは「ハイ」とハンカチを渡してくれる。真っ白な綺麗なハンカチ。
「今、澪音ちゃんには、本当の王子様が迎えに来てくれてる。
澪音ちゃんの立場上、自由に恋愛することは難しいかもしれない。だけど、それでも千秋くんは動いてくれた。君を迎えに来た。
だから澪音ちゃんも負けないで。
自分の運命に立ち向かってね。
そして絶対、幸せになって。
いや――幸せになるんだ」
「……はいッ」
純弥さんの温かい言葉に、涙が出る。
と同時に、ハンカチで涙を拭く私の腕を、きゅっと引っ張る小さな手。ひかり。